電脳遊戯 第6話


肉体を持った生物が、0と1の2進法で組み上げられた世界に入り込む。
普通に考えればあり得ない話なのだが、不可能を可能にする力、ギアスを用いることで神であるCの世界に干渉し、その肉体ごと0と1の世界へ強制的に組みこむ。
自分の生み出した世界へ、他者を閉じ込め観察するギアス。
まるで、神のように。

『それが、あの男のギアスだ』

意味が解らないと騒ぎだしたスザクに、ルルーシュが説明したのだが、スザクはますます分からなくなったと頭を抱えた。「0と1の2進法って何?暗号!?」と言った時点で、プログラムの基本から説明が必要だと悟り、この体力馬鹿に説明するだけ無駄だと、ルルーシュもC.C.も 説明することを諦めた。
C.C.はルルーシュの居る場所に何かヒントが無いかと、真剣な目つきでモニターを睨みつける作業に戻る。
ちなみに今用意されているモニターは30型のみ。
もっと大きなものを現在取り寄せ中だ。

「あ、でもギアスなら、ジェレミア卿のキャンセラーで解除すればいいじゃないか」

ひらめいた!という顔でスザクは口にしたが、ようやくそこに辿り着いたのかという視線でC.C.はスザクを見、ルルーシュは大きなため息をついた。

「それで解除できるならとっくに解除している。あの男にも、この機械にも、念のため謁見の間と屋敷にもキャンセラーは掛けたが、見ての通り変化無しだ」

ジェレミアは今朝までここにいたと言っただろう。
C.C.は頭が痛いと言いたげに冷え○たを額に張って、再びモニターに視線を移した。

『おそらく、だが。ギアスは俺自身にかかっている。だから俺に直接キャンセラーをかける必要があるのだろう』

ルルーシュ自身は0と1で構成されたプログラムの中に組み込まれているが、キャンセラーの力は0と1の世界に影響を与える事が出来ず、ルルーシュにまで届かない。
キャンセラーをもつジェレミアにギアスは効かないから、ジェレミアはルルーシュの元に行く事も出来ない。
それをあの忠義の騎士がどれほど悔やんだか。
この力が無ければお傍に行けるのにと、どれほど苦しんだか。
想像するのは簡単だった。

「・・・じゃあ、どうするんだ」
『ロイドがプログラムを解析したところ、このプログラムの何処かに入口とと出口が設定されている事が解った。だから今、その出口を探している所だ』
「延々と歩いているその通路に出口が?」

スザクがこの画面を見た時から、ルルーシュは真っ白い壁の通路をただ歩いているだけだった。

『ここにあるかは解らないが、この回廊を抜ける道は見つけなければならない。この道はループしているからな』
「ループ?」

なにそれ?と、スザクは眉を寄せ口にした。
そこからなのかと、C.C.は思わず渇いた笑いをこぼした。
この男には、メビウスの輪やウロボロスを想像しろと言っても解る筈がない。

『・・・つまりだ。今俺が歩いているこの通路は、入口と出口が繋がった状態なんだ』
「入口と出口が?」

どういう事?

『俺はずっと同じ場所を歩いている』
「え?」
『お前が来る前から、俺は同じ道をただ歩いているんだ』

まあ、お前なら見た方が解るだろう。
そう言うと、ルルーシュは帽子を手に取り、床に置いた。
床に置かれた帽子はそのままそこに残り、ルルーシュは一人先を歩く。
それから10分ほど歩くと、ルルーシュが進むべき道の先に、あの帽子が置かれていた。ルルーシュは動揺一つ見せず帽子を拾う。

「・・・一本道じゃないのか?」
『一本道だ。分岐する場所は無いし、ついでに言うなら湾曲もしていない、直線の道だ』

普通に考えるなら戻ってくる事などあり得ないのだが、こうして同じ場所に戻ってきてしまうのだ。

「暫く1か所に留まってみるとか?」

動くから駄目なのかもしれない。

『やってみたが、その場合トラップが作動する』

同じ場所には5分と留まっている事が出来ない。
だからルルーシュは時々壁を背に休み、すぐにまた歩き出しているのだ。
逆方向に歩いても意味が無いことも確かめ済みだ。

「トラップ・・・?」
「見たい、などと思うなよ?あれは心臓に悪い」

本気でルルーシュが死んだと思った。
それほどの罠が作動するんだ。
反射神経と、逃げ脚だけは早いルルーシュだからどうにか難をのがれたが、また無事でいられる保証は無い。
即死系のトラップ。

「プログラムの中での死は現実の死だろう」

だから、細心の注意を払い、ルルーシュを無事に出口へ導かなければならないのだ。

『ここに入る前は森だった。森の中にあった巨大な木の幹に扉があり、そこに入ったんだ』

そしてたどり着いたのがこの場所で、扉はルルーシュが潜った瞬間に消えた。

『入る方法があったなら出る方法もあるはずだからな。スザク、お前がそこにいても何もできないだろう?今は体を休めろ』

また暴動が起きたら働いてもらうからな。
努めて明るい声でルルーシュはそう告げた。

「そう言う事だ。目障りだから出ていけ」

C.C.はスザクに冷たい視線を向けた後、再び画面に視線を戻した。

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